第31回サイエンスカフェ@ふくおか 活動報告

みんなと“九州の西の海”をつなぐ第31回サイエンスカフェ@ふくおかを開催しました!

 

第31回ポスター

サイエンスフェ@ふくおか、第31回目のテーマは「九州の西の海の恵みと危機~九州西部の海の環境や資源の管理を考える~」です。今回は九州の海に迫ります!!

 

今回も会場はBIZCOLIさんでした!

暑い中、たくさんの方に来ていただきました。ありがとうございます!

今回の講師は九州大学大学院工学研究院環境社会部門清野聡子博士です!

講演では、九州の西の海の現状や抱えている課題について、写真を交えながら分かりやすく説明して頂きました。また、講演中に挙がった質問にも積極的に答えてくださり、理解をしながら講演を聴くことができました。

講師の清野聡子士(左)と聞き手の素粒子実験研究室 吉岡博士(中)とBIZCOLI館長の八尋さん

清野博士のプロフィール

東京生まれ、神奈川育ち。3歳で海岸と河川の現地踏査と動植物と石の採集と観察を開始。現在もほぼ同じ手法で研究教育を行う。小学生時代に肥後の石工の本を読み九州に憧れる。高校の修学旅行は阿蘇と長崎、学生時代の旅行は宮崎や天草など。

さらに東京大学助手時代の調査研究で、カブトガニで大分の干潟に、海岸環境で長崎の島々にはまってしまう。調査地が埋め立てにあう状況下で、生息条件に研究対象をシフト。河川や海岸の法改正に遭遇し、社会制度、自然の管理や合意形成にも興味を持ち、草の根から政策までの実践(実戦?)活動を行う。現在は、人類もふくむ水辺の生物の生息地や餌を研究。2010年より現職。自然保護に集中していたら何故か土木工学の教員になっていた。地域の知恵と科学の関係に注目。九州は自然も歴史・文化も最高に面白いフィールド!

皆さんは普段から、九州で獲れた美味しい魚を食べていると思います。また、他の地域から来た人から、九州の魚は美味しい!という話を聞くことがよくあります。九州の西の海は、古くから魚がよく獲れる大きな漁礁があり、漁業が盛んに発展してきました。そんな九州の西の海の現状や、抱えている問題とは一体何でしょうか・・・?


  • 海洋環境が変化している

九州の西には対馬海流が流れており、この暖かい海流が南からたくさん栄養分を運んでくるため、回遊魚の産卵場所となっています。春に九州の海で産卵し、夏の間に対馬海流に乗って東北、北海道の日本海側に流れていきます。そして秋になると北から九州にかけて戻ってくるのですが、最近は海洋環境が変化し、東北や北海道の海が暖かくなってきているため、魚が九州まで帰ってこないという問題が起きています。今まで九州で獲れていた魚が獲れなくなってしまい、漁業関係者や業界の様々なところで影響が出ているのが現状です。

表面水温偏差図(海上保安庁 海洋情報部より引用)

表面水温偏差図とは、表面温度の観測値と表面水温平年値の差を表した図のことです。東北や九州の日本海側の海が暖かくなっていることがわかります。

 

  • 魚の乱獲

現在は魚を獲る技術が進化し、大きな網を使って1度にたくさんの魚を獲ることができるようになりました。その結果、魚を獲り過ぎてしまい、絶滅の可能性がある魚が出てきました。また、日本よりも規制のゆるい外国の船が日本の海で魚を獲ってしまい、魚を守ることが難しいという問題もあります。

これらの問題を解決する手段の1つとして、海洋保護区をつくるという取り組みがあります。海洋保護区とは、「海の生態系保全を目的とした自然保護区の一般的な呼称です。漁業で乱獲され、または生態系や生息環境の破壊などにより絶滅が危惧されている海洋生物の保全、魚類の繁殖地などの地形の保全を目的に設けられます。」(環境省ホームページより引用)現在は長崎県の対馬にこの海洋保護区をつくろうという取り組みが行われています。

 

 

 講師の方は最後に、「これらの問題を解決するには、漁業と経済がタッグを組むこと、そして1人1人が漁業の課題について興味を持ち、考えることが必要である」と仰っていました。また、講演の最後に、「私たちが今できることは何かありますか?」という質問があり、講師の方は次のように答えていました。

「例えば、漁業が主な産業になっている自治体があるとします。その近くの海では魚が少なくなっていて、これ以上取ってしまうと絶滅の可能性があります。しかし、禁漁をかけてしまうと、収入が無くなり、生活できなくなってしまいます。そこで、10年という期間限定で禁漁をかけ、魚がある程度戻るまで待つ対策を打つとします。そして、その期間は漁業ではなく他の産業、例えば観光業を盛り上げて生計を立てることができるようにし、私たちはそこに行って色々なものを買ったりお金を使うことで、結果的にその地の漁業を守ることに繋がる。私たちが今できることは漁業の町を他の面から支えるお手伝いをすることではないでしょうか」と仰っていました。

私たちが普段の食事で美味しい魚を食べ続けることができるようになる為にも、漁業に関心を持ち、一緒に考えていくことが大切であると感じました。

 

~九州の海を語らう~


後半の質問タイムでは、講演で説明していただいた問題点や、その解決策についての質問がたくさん挙がっていました。その中で、他国と魚を取り合っている問題については、国家間での解決はとても難しいが、実際に魚を獲っている当事者や自治体が話すことで解決につながるのではないかと講師の方は仰っていました。また、禁漁以外に魚を増やす方法は無いのかという質問から養殖の話になり、現在の養殖は新しい時代に変わろうとしているという興味深いお話を聞くこともできました。


〜次回のカフェは?〜

 

 次回のカフェのテーマは、

 

無意識の力に迫る!~知らぬ間に働くあなたの小人~

 

です!講師には福岡女学院大学 分部利紘 講師をお迎えして、無意識の力の謎に迫ります!

 9月11日(金)19:00から開催致します。詳細はこちらのページです。みなさま、是非ご参加ください!!

(大倉)