第16回サイエンスカフェ@ふくおか 活動報告

みんなと”頭脳”をつなぐ素敵空間 第16回サイエンスカフェ@ふくおかを開催しました!

 

第16回ポスター

 

 第16回を迎えたサイエンスカフェ@ふくおか、今回は「脳の神秘に迫る!」をテーマに不思議な不思議な脳みその世界に迫りました!誰もが持っているけれどいまいちその正体がつかめない「脳」。そこには一体どんな秘密が隠されているのでしょうか?

 

 大入!満員御礼!

50名を越える方々にお越しいただきました!ありがとうございます!

会場であるBIZCOLIさんのフロアが埋まってしまいました!

やはり「脳」はみなさんの関心が高いテーマなんですねえ。

 

 さて、今回”脳の専門家”としてお招きしたのは、九州大学 基幹教育院の岡本剛博士!

 理論脳科学・生体情報科学を専門に人間の脳の仕組みに迫る気鋭の脳科学者です!もちろん今回も聞き手は、九大素粒子実験研究室の吉岡博士。実はお二人、大学学部時代に同じ研究室で卒論を書いた同級生なんだそうです!”脳”と”素粒子”、全く異なるそれぞれの世界で今や第一線の研究者となったお二方が楽しい講義を提供してくださいました。

今回の講師:九州で感動の再開を果たした二人(左:吉岡博士、右:岡本博士)

 

 岡本博士、非常に多才な方で脳科学だけでなく、写真やアートにおいてもプロ級なんです。そんな岡本博士のプロフィールがこちら。

 岡本剛博士のプロフィール

和歌山県出身。写真を愛する脳科学者で二児の父。

昔は宇宙のナゾを知りたかったのですが、今は脳のナゾを追いかけて格闘しています。

慶応から東大を経て、九大に来て8年。

運動会で「ヤー!」と聞いても驚かなくなりました。

基本凝り性で語り出す止まらない。よろしくお願いいたします。

 

脳の基礎知識

 

 「脳」、その存在と”どうやら身体の司令塔的仕事をしているらしい”ということは誰もが知っていることだと思います。しかし、その細かい働きや仕組みについてはほとんど知りません。ということで、「脳の基礎知識」から学んでいってみましょう!そもそも脳ってなにからできているんでしょうか?教えてください、岡本先生!

 

 岡本先生「約1000億個の神経細胞で構成されています」

 

 ”神経細胞”、これはどこかで聞いたことがあるような気がします。神経細胞はニューロンとも呼ばれ、ざっくりと描くと以下の様な姿をしているそうです(注:細胞によって形や大きさは様々!)。他の神経細胞から送られてきた情報信号は樹状突起から入力され、軸索を通してまた別の神経細胞へ出力されていきます。

 でも、この神経細胞、その単体での計算速度はコンピュータに比べるとあまり速くありません。”パソコンの脳”であるCPUは、1秒間に数十億回も計算処理ができる素子が積まれています。対照的に人間の脳は、神経細胞単体に対して1秒間に数百回程度の計算処理しかできません。しかし驚くべきはその数!先ほど岡本先生がおっしゃったように脳全体で1000億個以上もの神経細胞があります(大脳には140億個程度)。しかも脳は並列処理が大得意!これはつまり、「ひとつの仕事ができたら次の仕事」ではなく、「あらゆる仕事を同時に処理」できるということです。脳みそすごい!!

 

 

脳にまつわるエセ科学

 

 いや~、やっぱり脳はすごいなー!どんな情報もあっというまに処理してしまう!でも、普段は全然本気出してないんですよね?よく、「脳はその全体の10%しか使用してない」って聞きますし!本気出したらどうなっちゃうんでしょうか、岡本先生?未知の潜在能力が開花したり、超能力使えたr…

 

岡本先生「それ、嘘です。脳はいつもフル回転です。」

 

 ん?え?えええ…、信じてたのに。。

 どうやら、「脳研究が始まった当初、全体の10%に当たる部分の働きしか分からなかった」ことがまわり回って、「脳は全体の10%しか使っていない!」という迷信に転じてしまったようです。この他にも、論理的な人は左脳を使い、直感的な人は右脳を使っているという「右脳派・左脳派論」、魚を食べれば頭が良くなる!といった「脳が良くなる食品」、簡単なドリルで頭が良くなる「脳トレ」、これらは全くデタラメな迷信だったり、何らかの効果はあるものの拡大解釈されすぎた迷信なんだそうです!みなさん、意外と信じてましたよね?

 

 

脳の”見る働き”への新説 Okamoto model

 

 さあ、続いて岡本先生の専門分野「視覚」についてのお話です。私達が「ものを見る」とき、脳の中ではどんなことが起きているのでしょうか?

 岡本先生曰く、目の神経細胞である網膜から出された視覚情報は、一旦後頭部に集められ、そこから脳内の別の2つの経路を通って行くそうです。その名も、「背側経路」「腹側経路」。それぞれで行われる処理が異なり、背側経路では”動き・空間位置”が確認され、腹側経路では”形・色”が確認されます(下の絵を参照)。それぞれで処理された情報は統合された上で認知に至るわけですが、この統合のメカニズムについてはまだ解明されていないそうです…!

 さてさて、ここから少し難しくなってきます。視覚信号は一旦後頭部に集められるとありましたが、専門的には「一次視覚野」と呼ばれ、そこで重要な信号処理がなされています。一次視覚野にある神経細胞は、入ってきた視覚情報のほんの一部だけを取り出してその中に映る「ものの傾き」を調べてくれます。しかし、ひとつひとつの神経細胞はそれぞれ検出できる傾きが違います。さらにその神経細胞には個性があり、”周りの神経細胞の情報を使って広~く視覚を捉える神経細胞””孤立して自分の能力のみで狭~く視覚を捉える神経細胞”の2つの性格にわけることができます。

 この2つの性格の神経細胞が一次視覚野においてそれぞれどんなふうに配置されているかは納得のゆく説明がなされていませんでした。岡本先生は、これについて研究を行い、その配置を説明する新説を提唱しました!その名も、Okamoto Model!む、難しい…。でも、自分の名前のついた学説なんて憧れちゃいます!!

 

 

脳を語らう

 

 研究の話の他にも、脳科学者になる方法や大学教員のお仕事について、また将来の夢についてもお話いただきました。岡本先生は、2つの夢があって、1つは「芸術の脳科学的解明及び創出」、2つ目は「脳(感覚野)の再生医療の実現」なんだそうです!なんてかっこいい夢なんだ。。

 講義の後はいつもの質問タイム!みなさん脳についてすごい関心を持っていて、いつも以上に議論が白熱していました!

 

 

次回は!?

 

 次回のサイエンスカフェは3月1日(土)に開催予定!テーマは「ロボット」!!

 詳細が決まり次第、HP・SNS等でお知らせします!お楽しみにー!

 

(古浦)